■観戦者の語れる 2004.7.10

埼玉、朝10:00。しかもバス便。それなりにチャレンジングな設定であるが、筆者にとっては生ぬるい。でもまさか、埼玉でのスポーツ初観戦が浦和レッズではなく、カンジツになるとは・・・。などと感慨にふけっているうちに、バスは会場へ到着。真新しい体育館へ足を踏み入れると。あ、あつい。最近冷房病気味の筆者にとっては、たまらなく暑い。これでバスケをやって大丈夫なんだろうかなどと心配するまもなく試合開始。

第一試合は特別区-三井住友である。

■1Q開始直後、特別区がいきなり石倉(茜)のゴールでジャブをかますと、三井住友も鈴木(美)の3ptでお返し。8:25、特別区の関(由)がFTをもらうが2本とも外す。「ほら、こういうのは大事にしなきゃ」、と思っていたら、7:31、三井住友がパスカットからの本間のゴールに続いて、武石、本間、小室と4連続ゴールで6:21には11-2。三井住友のスチール、パスカットが特別区に容赦なく襲いかかる。6:00、特別区の攻撃で、DEFを引き連れて外に出たスペースを山岸がつき、11-4と一矢報いるが、しかし。

三井住友の攻めの勢い、守りの激しさは止まらない。5:46の新井のFTで13-4とすると、本間、新井、小室、小室(速攻)、七尾(速攻)、新井(速攻)、新井(FT)、七尾(パスカットから)、鈴木(裕)のFTと連続ゴールする一方、特別区にはまったく得点させず突き放し、そのまま30-4で終了。特別区はパスをことごとく読まれている感じだ。また、ゴール前で芸のある連携を見せたり、石倉(茜)が個人技を披露したりするが、せっかくシュートまで持ち込んでも、最後のツメがいかんせん甘い。だが、それにしても暑い。観ているだけで汗がだらだらしてくる。これはやる側にとっても影響がないとはいえないだろう。

■2Qは、9:36、三井住友の七尾からパスを受けた本間の3ptでスコアボードが動き出す。それに対して特別区石倉(茜)がスピードに乗った突破をみせるが最後のレイアップが入らない。すると、三井住友のマシンガンがまた火を噴く。益田がゴール下の強さを見せて35-4とすると、次は益田→鈴木(裕)→育村の流れるような連携で37-4。さらに益田、本間と、4連続得点で6:37には41-4。いっぽう特別区も、石倉(茜)が1on1でDEFをかわしフリーの関(由)にミドルを打たすが、入らない。すると6:12、三井住友の上原がそれをあざ笑うかのように遠めから3ptを突き刺す。冷酷である。

その後、三井住友の波状攻撃が続くが、シュートは落ちつづける。特別区はDEFに際してゴール前に小さく固まっているような感じだ。3:37、特別区はORから鈴木(美)の得点で43-9とするも、すぐに三井住友の本間(鈴木(裕)からのきれいなアシスト)、小室が得点が決める。のこり2分を切り、かなり疲れが見えてきたにもなか、0:40、特別区が野村の3ptで47-13とする。今度は特別区が波状攻撃をしかけORを何度も取るが、フリーのシュートも落ち、そのまま2Q終了。だが、最後、「ディフェンスから!」と大きな声でチームメートを鼓舞する選手がいた。野村である。これだけの大差、これほどの暑さ。それでも、心は折れていなかったのだ。

■3Q立ち上がり、三井住友の鈴木→本間の速攻に特別区DEFはついていけない。つづいて七尾のミドルを浴び、9:06には51-13。ああ、このまま残忍になぶり殺されていくのか、と思いかけた瞬間。特別区のバスケットが揺れる。8:22、石倉(茜)の左45度3ptだ。すると8:10には関(由)が得点。初めての連続得点だ。来た。特別区の波が来たのだ。7:06には石倉(茜)が左サイドを駆け上がり51-20とすると、鈴木(美)、山岸と続いて6:06には51-24。さらに、速攻で山岸から鈴木(美)へパスがわたるがシュートはブロック。また、三輪がフックを試みて失敗、石倉がスチールするがトラベリングと惜しいシーンが続く。が、勢いは衰えていない。

4:52、三井住友は、鈴木(裕)の正面突破、ストライド走法で駆け抜けるゴールで54-26とするが、特別区も、関(由)、鈴木(美)が連続得点と動きがよい。すると、2:27、特別区鈴木(美)の仕掛けから、野村の右30度3ptが炸裂し56-31。1:48にはまたしても特別区の3pt。またしても野村だ。決めた本人が「ワー!」と歓声をあげ、万歳をしつつ、DEFへ走る。0:46、三井住友は、ゴール下、本間が後方の小室へアシストパスを通し58-34とするが、特別区は0:00、鈴木(美)のシュートが落ちたところ、山岸が飛び、バレーのトスのようにそのままゴール!このQは結局、11-23で特別区が圧倒。つっ、強い。これが、「強い特別区」の姿だったのだ。埼玉まで観に来た甲斐があったぞ。

■だが、4Qに入ると、過酷な現実が再び目の前に突きつけられる。特別区はORを取ったり、DEFへ戻る意識が高まったりしているにも関わらず、三井住友が地力で圧倒する。育村、七尾のゴールで7:28、62-36となったところで、特別区石倉(茜)→関(由)のコンビネーションで1ゴール返すが、6分以降は一方的な展開。七尾の得点につづいて鈴木(裕)、七尾、また鈴木(裕)と、なんと3連続3pt成功で、4:17には73-38。その後特別区も、石倉(茜)から鈴木(美)へ絶妙の縦パスが通るも、得点にはならず。三井住友は最後に鈴木(裕)、そして本間のフックを加えて、文字通り特別区を粉砕した。

■大方の予想どおりの結果であろう。こんなことを言っては何だが、負けると分かっていた試合かもしれない。だが、それでも観客は観る。会場に来てしまった以上は、観つづけるのである。そして、スコアボードの数字に関係なく、いいプレーが出れば、素晴らしいと思う。それが2度、3度続けば、喜んでしまう。実に単純だ。その意味で特別区の3Qは、「輝かしい」としか形容のしようがないのであった。


つづいて丸紅-クラヤ戦。すこし冷房が入ったようだが暑さは相変わらず。


■1Q、前節の鷺宮戦では出だしでもたついた丸紅だが、今日は見違えるように順調な滑り出しを見せる。8:31、宇井がまずトリッキーなゴールを決めると、白澤→宮崎→富田のパスワーク、そして高田、宮崎と4連続得点で5:38には8-0。クラヤは4:58、佐藤がゴール下でねばってようやく初得点で8-2。と、4:40、珍しいシーンを目撃。丸紅の関口のFT、1本目成功したあとの2本目、ボールはリング正面を直撃、まっすぐ跳ね返ってきたのをジャンプしてキャッチ、そのままシュート!いやぁ、あんなのは初めて見た!なんか名前がついているのだろうか。応援席も沸く。いよいよ丸紅の勢いは止まらない。

つづいて、高田が持ち味の切れのよさを今日も見せ、連続得点で、2:56には14-2。丸紅はDRを取れているのがよい。2:17にはクラヤが5Fとなり、15-2。1:36には速攻、左サイドを高田が駆け上がり、ゴール前へ走りこんだ宮崎で17-2。暑さも吹き飛ぶ流麗な攻撃だ。いっぽうクラヤは、斉藤(知)が元気さを見せ1:30、ゴール&バスカンで、17-5とするが、丸紅もDRを取った森崎のFTで0:54には19-5。それに対してクラヤは0:40、得点源の楠田が今日初のゴール。カットインしつつ、最後の鋭いサイドステップでDEFをかわして19-7と追い上げるが、0:14、丸紅は、ゴール下の高田からパスを受けた宮崎がミドルシュート&バスカンで22-7と突き放して1Qを終わる。

■2Qは開始早々、丸紅が白澤の粘り→上野でFT、22-8とする。このあと、丸紅とクラヤとが点を取り合う展開に。まず、クラヤのパスカットから佐藤が得点(22-10)すると、7:22、丸紅高田が自らDRを取ったのをそのままゴールへ一直線、小野伸二の10人抜きドリブルを彷彿とさせるスピード&テクニックで24-10(バスカンは×)とする。6:21、またしても高田、今度はバスカンも決めて27-10。それに対してクラヤも佐藤、柳田(一人で持ち込みFT)で応戦し5:24には27-14。クラヤベンチから守備場面で「ディーフェンス!」との掛け声が上がり始める。すると、4:58、木村がDEF二人の間をすり抜けゴールで27-16と3連続得点。

丸紅は、ダブルドリブルやノールックパスのミスが続いて出る。4:24には丸紅が5Fとなるが、クラヤはFTを2本とも外す。丸紅は3:30、高田のゴール(29-16)で逃げるが、3:07、クラヤは大崎の3pt(29-19)でいよいよ追撃ののろしを上げる。丸紅宮崎のゴール(31-19)の後、クラヤはORから楠田、柳田→ロングパス→木村で1:59には31-23。このあたり、クラヤのDEFが良く効くようになってきたいっぽう、丸紅は高田一人が目立っている印象。0:18、その高田のFTで32-23とするが、クラヤは最後、またしても大崎の3ptが轟き、32-26と6点差まで追い上げ休憩へ。

■3Qにはいってもクラヤへ傾いた流れは変わらない。相変わらず高田の個人技が目立つ丸紅に対して、クラヤはチーム全体がだんだん粘っこくなってきている感じだ。丸紅は立ち上がりこそ、宮崎→白澤で34-28とするが、その後、1分あまりの間に、クラヤが4連続得点!しかもそのうち2本が3pt!両方とも大崎である。まさに怒涛の攻めで7:32には36-34と、丸紅の背中に手をかける。丸紅応援席からは「おちつけ、おちつけ」との声が。この声が効いたのか、丸紅は7:11の白澤のゴールを皮切りに、白澤、宮崎、宮崎と4連続得点で5:14には44:34と再び10点差とする。が、すぐさまクラヤは、今度は白田の3pt、斉藤(知)で44-39と食らいつく。と、3:42、クラヤ斉藤が自陣から一人でぶっちぎりゴールで45-41。

対する丸紅は速攻から高田のシュートが成功(47-41)するが、その高田もクラヤ楠田につかまる場面が出る。と、クラヤは2:21、千種のゴール(47-43)に引き続き、1:34、またしても斉藤が自陣からぶっちぎりゴールで47-45、さらに、1:14には白田の3ptに対する丸紅のファールで得たFTを3本とも決め、47-48とついに逆転!最後は0:30、丸紅が宮崎の3pt気味のゴールで49-48と再逆転するが、「さすが、これがクラヤの意地か」と思わず唸る。クラヤはスピードのある斉藤(知)と白田が実に良く効いているほか、チーム全体が上手く機能しているのに対して、丸紅はコンビネーションが上手くいかず、高田に頼りすぎていう感じだ。丸紅は森崎を斉藤(知)対策に使ったらどうだろうかなどとと素人考えをめぐらしてみる。

■4Qも、高田の個人技から幕が開く(51-48)。続いて宮崎がDEFを背負いつつシュート、FTをもらい強さを見せる(53-48)が、クラヤは、9:05、斉藤(知)→千種の素早い攻めで53-50と、一歩も譲らない。と、8:38、丸紅は森崎を投入!マークにつくのはもちろん斉藤(知)。いやー、筆者の思ったとおりの采配だ。戦術的なことはよく分からないのでこれまで采配うんぬんについて試合中に考えることはめったになかった。ましてや自分が思ったとおりになるなんて初体験である。なんだか非常に嬉しい。これは森崎に期待せずにはいられない。7:02、クラヤが遠距離砲大崎の遠目の2ptで53-52と追い詰めるが、5:40、待ってました。その丸紅森崎が3ptを沈め、56-52。続いて4:25、高田の得点で58-52と、丸紅は逃げる。が、クラヤもすぐに、柳田の3ptで58-55とし、追撃の手を緩めない。

両者最後の踏ん張りどころだ。さぁ、勝負。先手を取ったのは丸紅。3:14、宮崎で60-55とすると、つづくクラヤの攻めで、痛恨の「ボール置き忘れドリブル」が出てしまう。それを高田が抜け目なくカットして得点し62-55。次のクラヤの攻撃でも、今度は森崎がスチール!宮崎のFTに結びつき、2:30には64-55。さらに、1:28にはゴール下の高田がFTをもらい66-55。クラヤも1:13に柳田で66-57とた直後に、今度はスチールから楠田のゴール&バスカンで66-60と最後まで諦めない。(ここでスコアボードの数字が手元のメモとずれているのだが・・・。ま、いいや。) 丸紅は安全圏に入ったとはいえ、0:48にはTOが出る。最後は、0:02、クラヤが金谷のゴールで66-62と4点差まで詰め寄ったところで試合終了。

■集団競技の心理の難しさを改めて目の当たりにした試合であった。開始早々丸紅がかなりのリードを奪い、見ている自分も拍子抜けといった感じだった。その後、キレのある高田が孤軍奮闘するシーンが増える。これは、高田の「オレが、オレが」という気持ちからなのか、周りの「高田さん、高田さん」という気持ちからなのかはわからない。また、これまで要所で入ってきた3ptが今日は一本しか入らなかったというのも大きい。暑さの影響も考えられよう。いっぽうのクラヤは、2Q以降、チーム全員による有機的な攻めが出来ていたように思う。追い上げる側の方が心理的に優位ということなのだろうか。両チームとも次は鷺宮と当たる。この試合から得たものも大きいのでは、などと思っているうちに、冷房の効いた浦和駅行きのバスは走り出したのだった。

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